警備業従事者、警察・自衛隊関係者の方々が応急処置についての動画をYouTubeなどに投稿しているのをときどき見かけます。その多くが、日本ではあまり使う機会がないターニケットなどの技術についてです。ターニケットも知っておくべきテクニックですが、日本ではターニケットよりももっと使うケースが多いエピペンについて話す人がほとんどいないのはとても残念です。
エピペンは、アメリカのマイライン・インコーポレイテッド社が登録商標を持つアナフィラキシーに対する緊急補助治療に使用される注射薬です。日本でも2003年8月に厚生労働省から承認され、販売されています。2009年3月には、アメリカのEMTと同じように日本でも救急救命士が代わりに射つことが出来るようになりました。ちなみにエピペンが発明されたアメリカでは、日本よりも16年も早い1987年に日本の厚生労働省にあたるFood and Drug Administration (FDA)に認可を受けています。
私は、ニューヨーク州のEMT-Bのコースでエピペンの存在を知り、そして使い方を学びました。国連時代に、重度の海老アレルギーを持つ後輩がクリスマスパーティで海老を取ったトングが間違ったトレイの上に置かれていたために誤って使い、アナフィラキシーショックを起こし、すぐに病院に運ばれたものの亡くなってしまったことがあります。私自身も軽度ですが、アレルギーをいくつか持っており、フェキソフェナジンを毎日飲んでいます。これらのことから、私にとってアレルギーは、とても身近なものであり、同時にすごく怖いものだと感じています。
国連の警護班が携帯するメディカルキットの中には、当然エピペンが入っており、私も含めたEMT-B以上の免許を所持者は、警護対象者がアレルギーによるアナフィラキシーショックを起こした場合には、すぐにエピペンを注射する取り決めになっていました。
動画などで応急処置を取り上げる方がエピペンについてはほとんど話していないので、日本におけるアナフィラキシーによる死亡数がアメリカに比べて少ないのかと思いました。しかし、調べてみるとそうでもないのです。厚生労働省の記録によると2019年のアナフィラキシーによる年間死亡者数は62人、直近10年で見ると2013年に77人、2012年から2019年の平均でも58人となっています。日本よりも人口数が多いアメリカでもアナフィラキシーによる年間死者数は60~100人が平均なので日本とほぼ変わらないぐらいか、日本の方が多いぐらいです。
エピペンは、食物によるアレルギー以外にも蜂に刺されたことによるアナフィラキシーショックにも使用が出来ますし、使い方を誤らなければとても効果的で、人の命を救うことが可能です。私もアメリカにいた際に色々なところでエピペンの教育を受けましたが、ターニケットと同じで命に係わることなので専門家の下で正しい使い方を学び、その技術を取得してほしいと思っています。法律では誰でも使用が可能ということに一応なっているようですが色々と細かいルールが多い日本では、ボディガードという職業が理由で、エピペンの処方をもらうことは簡単ではないと思います。エピペンは1本1万円近くする高価なものですし、1年ごとに交換しないといけないので、必要がないのであれば日頃から携帯する必要性はないかと思いますが、アレルギーを持つクライアントを受け持った場合、エピペンの使用法をマスターしておけば、いざというときに焦らずに適切な処置、対応をすることが出来ます。
国立病院機構・相模原病院・臨床研究センター・臨床研究センター長・海老澤元宏医師が監修をしたエピペンガイドブックがとても分かりやすいのでぜひ参考にしてみてください。
※日本では、食物アレルギーよる死亡はほぼなく、蜂と薬物アレルギーよるアナフィラキシーショックでの死亡者が圧倒的に多いです。
アナフィラキシーを持っているお子様がいる方は、お子様のカバンなどにこのようなキーホルダーを付けるといざという時に対応しやすくなるかもしれません。
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