銃撃から身を守る手引き

世界でも他に類を見ない厳しい銃規制により安全を守ってきた日本で、自身が銃撃されるかもしれないと考えたことがある人は、ほとんどいないのではないでしょうか。学校における乱射事件が多発するアメリカでは、Active Shooterの対策として、「Run, Hide, Fight」という手順を指導しています。ただ以前、Twitterにも書いたのですが、Campus HQGuy Bliesner氏が提唱するMove, Secure, Defendの方がより本質を捉えているので、このブログの読者の方には、「Move, Secure, Defend」で覚えて頂きたいと思います。

銃撃から身を守るうえで最も重要なことは距離です。常識的に考えて、標的が遠ければ遠いほど狙いを定めることは難しくなります。さらに動くターゲットは、狙いを定めることが動かぬターゲットよりも難しいです。逃げるチャンスがあるのなら、とにかく安全な場所に逃げることが重要です。「距離」は、Bliesner氏の手順で言うところの「Move」に当たります。従来の手順のRunだとここまでになってしまいますが、Moveを使うのには、安全な場所に逃げることが出来ない状態では、その場に伏せたり、身をかがめ小さくなったりすることも身を守る術として有効だからです。

そして次に逃げる場所です。銃撃から身を隠す盾や壁には2種類あります。それがCoverConcealmentです。CoverもConcealmentも身を隠すという意味合いでは同じですが、Coverはコンクリート・ブロックや分厚い鉄のドアだったりと銃弾が貫通しないもので身を隠すことを指し、Concealmentは相手から姿が見えないようは出来ても、銃弾の貫通を止めることはできないもので身を隠すことを意味します。安倍元総理の事件における警護体制についての個人的見解の記事中に、元総理の背後に車両を停車することを1つのアイデアとして出しました。防弾車でない一般的な車両の場合、窓ガラスや車体も口径によっては貫通してしまうため完全ではないものの、これはどちらかといえばCoverにあたります。道路交通法の関係で車両を背後に配置することが出来ない場合には、最悪、人やノボリ(応援旗)で元総理の姿を隠すという著者の提案や、銃弾に倒れた安倍元総理を治療する際にブルーシートで目隠しをしていたのは、Concealmentにあたります。出来ればより強固なCover、なければConcealmentという形で安全を作ります。身を隠すにも色々とあるので、最も安全な場所に逃げることを考えれば、Active Shooterの手順としてはやはりHideよりもSecure(身を守る)の方がしっくりきます。

写真左のような大木なら口径にもよるが銃弾を貫通させない(Cover)。写真右の草むらは身を隠すことは出来ても銃弾を防ぐことは出来ない(Concealment)。

最後に、それしか生き延びる手段がないのであれば、襲撃者に立ち向かうしかありません。今回の安倍元総理の警備や警護を担当した警察官はその任務の特性上、Fightでも良いのですが、一般人の場合には、相手を制圧する為に戦うFightではなく、生き延びる為の護身(Defend)です。さらに、DefendからMoveやSecureにつなげられれば、生き延びる可能性を広げることが可能です。なおFightにしてもDefendにしても大事になるのが、サプライズです。武器などを持つ相手に真正面から向かうよりも襲撃者が予想しない行動をとることで相手を驚かし、ひるませられればその場や危機から逃げれるチャンスが生まれます。例えば、一般的に考えて最初から反攻的な人が反撃に出るよりも、襲撃者の命令に従順な人が突然反撃に出る方が、意表を突くため成功率は高くなります。因みに安倍元総理の事件に関しては、警備や警護は容疑者をいち早く制圧するため、サプライズよりもAction vs. Reactionを踏まえ、最短で距離をつめる必要があります。※PPOの優先は制圧より対象者の避難

今後また安倍元総理の事件のような犯罪が起きない、起こさない為に、警備・警護の強化も必要ですが、これを機にもうこの地球上に犯罪が絶対起きない100%安全な場所はないことを理解し、このような銃を用いた事件の現場に居合わせてしまった場合、助かる為にどのような行動が必要なのかを今一度考えて欲しいと思います。


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