「空港でのBaggage Officer(s)」では、空港での荷物の取り扱いに焦点を当てましたが、Baggage Officer(s)はイミグレーション関連の担当を兼ねる場合も多くあります。とにかく警護対象者(以下「V」)の空港での滞在時間(=エクスポージャータイム)を減らす為にVや警護チームメンバーの代理でチェックインを済ませる関係上、パスポートも預かることになります。ただし一般的には、警備上の理由から代理のチェックインは認められていないため、事前の根回しが必要になります。
代理人にチケットを発行することが不可能な場合でも、どうにかチェックインに必要な手続きを全て済ませてもらっておき、Vや警護チームメンバーは空港到着後に本人確認のみですぐにチケットを貰うことが出来る状態にするなどの対応をします。
目的地到着後も同様、Vがイミグレーションで空港から出発するまでの時間を短縮できるようアシストすることもBaggage Officer(s)の大事な役目です。Vのステータスによっては本人がわざわざイミグレーションに出向く必要のない場合もあります。その場合には、Baggage officer(s)が全てのメンバーのパスポートを持ちイミグレーションでの手続きをします。HSやHG、もしくは国賓等、政府から直々に招待されるような人は、こうした待遇の典型です。この場合Baggage Officer(s)以外は、飛行機からターミナルを経由せずにターマックで待つ車列に直接乗り込み移動を開始することもよくあることです。イミグレーションが終わるまで空港を出ることが許されないVの場合には、Baggage Officer(s)がイミグレーションの手続きをしている間、ラウンジや人目に付きにくい部屋等で待機できるようにコーディネーションをするなど、どうにかしてエクスポージャータイム(露出時間)を減らします。
治安が優れない国や地域への海外出張中は、突発的な移動も起こりえる為、チームに合流したBaggage Officer(s)は移動の予定がない日でもVと主要メンバーのパスポートを携帯し、万が一に備えます。
日本は外国に比べ凶悪犯罪が少ない安全な国だと言えます。しかし、その反面、外国に比べて台風、大雨、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火などの自然災害が発生しやすい国です。一般財団法人 国土技術研究センターによれば、日本の国土の面積は全世界のたったの0.28%しかないにも関わらず、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.0%が日本にあります。また全世界の災害で死亡する人の0.3%が日本人というデータもあり、世界でも災害の割合が高い国となっています。そんな日本への出張の際は、滞在先の気候に注意を払う必要があり、場合によっては日本でも緊急を要す移動の可能性がある場合には、Baggage Officer(s)はパスポートを携帯します。
実際、2018年8月に長崎へ出張で行った際、台風の影響で、予定では長崎から東京経由でニューヨークに戻る予定だったのが、当初の予定とは全く異なる長崎から福岡まで陸路で移動し、そこから韓国のソウル経由でニューヨークに戻るということがありました。
やはりテレビや映画で描かれるようなボディガードの仕事とはかなりかけ離れた地味な内容ですが、これもボディガードの重要な仕事の1つです。
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