日本人ボディガードが海外で直面する扱い

ボディガードと現金の回で、無料で最高のサービスを提供してくれるのは日本ぐらいで、他の国ではサービスを受けたら、それ相応の対価(チップ)を支払う必要があると書きました。しかし、ここで気をつけないといけないことが1点あります。それは、海外の人たちが持っている日本人へのイメージです。

 実際は、既にその力を失い世界から取り残されつつある日本ですが、80年代に日本経済が世界を席巻していた時のイメージを今でも持っている人たちが海外には結構います。バブル期に海外に出ていた日本人たちは、羽振りが良く、チップなども言われるがままに払っていたのでしょう。英語にコンプレックスを抱える日本人は、ガツガツと強引に来る外国人に対して対抗することが難しく、相手の要求を不本意ながら受けて入れてしまっているということもあります。

 こうしたことから、海外では日本人というだけで不当の金額を求められることがあります。 実際、私も海外出張中になんどかそういった経験をしました。

 一度はトルコのガジアンティプ空港でした。アメリカ国内であれば、民間機であっても拳銃を携帯したまま搭乗しますが、国際線の場合には、利用する航空会社のポリシーによっても異なるものの通常は預け荷物扱いになります。さらにブリティッシュ航空やTAPポルトガル航空など、拳銃を預ける際スペシャルパッケージになる航空会社の場合は別料金が発生します。これは航空会社のホームページにも記載されており、金額設定も分かっているので普通に支払います。しかし、そういった事前の注意もなく、突然、拳銃を預ける際に特別料金を払うことを求めてくる航空会社というか、航空会社職員がいるのです。ターキッシュエアラインズは、何度も利用したことがあり、それまで一度も拳銃を預ける際に別料金を求められたことがありませんでした。しかし、その日は同僚の拳銃も含め3丁の拳銃を預けようとしたところ、1丁につき500ユーロを支払うように求めれました。500ユーロは、アメリカドルに換算すると約600ドルです。グロック19は、アメリカでは新品で購入しても500ドルほどです。当然1丁につき、500ユーロなんて金額は払うわけがありません。トルコからはニューヨークに戻るだけだったので、その職員に500ユーロならアメリカで新しいグロック19を購入するので、そちらでキープしてくださいと答えました。すると、その職員は特別にディスカウントをすると言い、提示された金額は1丁につき100ユーロでした。3丁で1500ユーロだったものが、突然300ユーロになるなんて明らかにおかしいので、トルコの外務省のお偉いさんにその話を伝えたところ、すぐにターキッシュエアラインズの責任者が謝罪をしに来て、結局無料で拳銃を預けることが出来ました。日本では考えられないかもしれませんが、海外では職員が自分の小遣いの為に不正をしている場合もあります。現金のみでクレジットカードでは支払いが出来ない、レシートが貰えない、もしくは手書きのレシートの際は特に気をつけて下さい

(写真上)国連本部警護チームの正式採用銃・グロック19

 他にも、エチオピアのアディス・アベバの空港で出国のアドバンスをした際に、ポーターたちには十分なチップを払ったにも関わらず、「○○国の警護官は、もっと払ってくれた」などと難癖をつけ追加を要求されたことがありました。国連本部の警護チームでは、空港やホテルのポーターなどサービスを受けた際に払うチップため、事前にPetty Cashを貰っています。使わなかった分は返却するため、個人的な懐具合でチップをケチる必要はありませんし、大抵の場合は相場よりも少し多く払います。アディス・アベバには、アフリカ連合(AU)の本部がある為、政治家の警護をしている人だと結構行く場所で、私自身もアディス・アベバには、何度も行っています。この追加のチップを要求されたのは、初めてアディス・アベバに行ったときだったのですが、事前に相場を聞いて十分なチップを渡していたので、相手がふっかけてきているのだとすぐに理解しました。サービスに対して相応の対価を払うのは当然のことですが、実はこのふっかけてきた空港職員の仕事はとてもひどいもので私が払ったチップはむしろ彼のサービスに対して渡し過ぎなぐらいでした。それでもしつこくチップの追加を要求してくる彼に、私は凛とした態度で「既に渡したチップで満足がいかないのなら、次回はもっともらえるだけの仕事をしてください」、「なぜそれだけしかもらえなかったのかを良く考えてみてください」と伝えました。そして「あなたが今日してくれたサービスであれば、先ほどあげたチップも返してもらわないと納得がいかないぐらいです」と言うとついに彼は私にしつこく付きまとうことをやめました。

 前述の理由と合わせ、日本人は体格的にも欧米人やアフリカ人に比べ小さかったり、若く見たりするため海外で侮られることも残念ながらあるかと思います。しかし、事前に十分な現地文化などのリサーチをしておくことで、そのような態度を取られても自信をもって対応することが出来ます。海外で活躍するボディガードになると、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの格言「Knowledge is Power(知は力なり)」を実感することがよくあります。拳銃などの武器やCQCばかりでなく、知識もバランスよく身につけることが海外で活動していくには重要なのです。


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